
Time-gated Ramanデータを、解析と判断へ
Photontrace Navigator 1.0

Photontraceは、Time-gated Raman分光によって取得されたデータを、より分かりやすく比較・解析し、研究や評価における判断へつなげるための解析ソフトウェア「Photontrace Navigator 1.0」を開発しました。
Time-gated Raman分光では、ラマンシフト方向のスペクトル情報に加えて、ナノ秒領域の時間情報を含むデータが得られます。
この時間軸を利用することで、ラマン散乱と蛍光背景の時間的な違いを捉え、従来型ラマン分光では解析が難しかった試料から、有用なスペクトル情報を抽出できる可能性があります。
一方で、取得されるデータには時間と波数という複数の軸が含まれるため、測定後の処理や比較には、Time-gated Ramanデータに適した解析環境が必要です。
Photontrace Navigatorは、こうした測定後の解析を一つの環境で行うことを目的として開発した、Time-gated Ramanデータ解析プラットフォームです。
Navigatorという名称には、Time-gated Ramanの測定データから、比較、解析、解釈、そして次の判断へ進む過程を案内するという意味を込めています。
Photontrace Navigatorでできること
Photontrace Navigator 1.0には、測定後によく使用する解析機能をまとめています。
1.2つの測定データの比較
2つのTime-gated Raman測定データを、共通または個別の時間ゲートと前処理条件で解析できます。
スペクトルの重ね合わせだけでなく、ピーク強度やスペクトル差、時間方向の変化を比較することで、処方、濃度、反応前後、製造条件などによる違いを確認できます。
2.Virtual Gate Spectrumの作成
時間プロファイル上で任意の時間範囲を選択し、その範囲からVirtual Gate Spectrumを作成します。
異なる時間ゲートから得られるスペクトルを比較することで、ラマン信号を保持しながら蛍光背景を抑えられる時間範囲を検討できます。
3.時系列・Waterfall・Heatmap解析
複数の測定データを時間順に並べ、スペクトル変化をWaterfall表示やHeatmapとして可視化できます。
反応、培養、結晶化、劣化、経時変化など、測定対象がどのように変化しているかをスペクトル全体から確認するための機能です。
4.PCAによるスペクトル比較
複数試料のスペクトルに主成分分析(PCA)を適用し、試料間の類似性や違いを可視化します。
単一のピークだけでは捉えにくいスペクトル全体の変化や、試料群の傾向、外れ値の確認に利用できます。
5.前処理条件の比較
ベースライン補正、平滑化、正規化などの各処理段階を比較し、前処理によってスペクトルの特徴がどのように変化するかを確認できます。
解析結果だけでなく、そこに至る処理条件を記録し、比較できることを重視しています。
測定から報告までを一つの流れに
Photontrace Navigatorは、解析結果を画面上で確認するだけでなく、処理済みスペクトル、解析条件、表形式データ、グラフ、PDFレポートとして出力できます。
基本的な流れは次のとおりです。
- 測定データを読み込む
- 時間ゲートを設定する
- 波数範囲と前処理条件を設定する
- スペクトルを比較・解析する
- 結果と解析条件を保存する
- レポートとして出力する
解析条件を明示することで、「どのような処理を行った結果なのか」を後から確認できる設計を目指しています。
装置ソフトウェアを補完する解析環境
Photontrace Navigatorは、Raman分光器を制御して測定を行うためのソフトウェアではありません。
測定装置から出力されたデータを使用し、比較、可視化、多変量解析、レポート作成を行うための測定後解析ソフトウェアです。
装置によるデータ取得と、研究目的に応じた解析を分けることで、試料や評価目的に合わせた柔軟な解析を可能にします。
お客様先でのPoCから生まれたソフトウェア
Photontrace Navigatorの出発点は、お客様先でのTime-gateラマンのPoCを実施する中で感じた、「この場ですぐに結果を見やすく整理し、次の判断につなげたい」という思いでした。PoCでは、限られた時間の中で測定条件を調整しながら、複数の試料や時間ゲートによる違いを確認します。
単にデータを取得するだけでなく、
「目的とするRaman信号は捉えられているか」
「時間ゲートを変えると、蛍光背景とスペクトルはどのように変化するか」
「2つの試料には、どのような違いがあるか」
「次はどの条件で測定すべきか」
といったことを、できるだけ早く判断する必要があります。
しかし、Time-gated Ramanの測定データには波数軸だけでなく時間軸も含まれるため、測定直後に比較しやすい形へ整理するには、いくつもの処理が必要です。データを持ち帰ってから解析するだけでは、その場で得られた気づきを次の測定条件へ反映できないこともあります。そこで、PoCの現場で「あったらいいな」と感じた機能を、一つずつソフトウェアとして形にしてきました。
- 2つの試料を同じ条件で比較する
- 時間ゲートの違いを分かりやすく可視化する
- スペクトルの時間変化をWaterfallやHeatmapで確認する
- 複数試料の傾向をPCAで捉える
- 前処理によるスペクトルの変化を確認する
- 解析条件を記録し、レポートとして出力する
Photontrace Navigatorは、PoC現場で必要と感じたことを機能化したアプリです。
今後の展開
Photontrace Navigator 1.0は、完成形ではなく、Time-gated Ramanの実用化とともに成長していく解析プラットフォームです。
今後は、実試料による評価を重ねながら、解析結果の再現性、操作性、レポート機能を改善するとともに、Photontrace Atlasをはじめとする他の解析ツールとの連携も検討していきます。
Photontraceは、Time-gated Ramanによって「これまで蛍光に隠れていた情報」を取得するだけでなく、そのデータを研究や工程上の判断に活用できるところまで支援することを目指します。
Photontrace Navigator 1.0
Time-gated Raman測定および解析についてご関心がございましたら、Photontraceまでお問い合わせください。