

Timegated ラマン分光法による産業上重要な鉱物のスクリーニング
Timegateでは、2018年にEIT RawMaterialsの助成を受けたBoosterプロジェクトを実施しました。
このプロジェクトの主な目的は、Timegated® Raman技術がどの種類の鉱物に対して高い感度を示すのかを、幅広く把握することでした。
プロジェクトでは合計37種類の鉱物試料を測定し、有望な有価鉱物(図1)の検出可能性と、鉱石処理上問題となる脈石鉱物の識別可能性を調査しました。 (脈石鉱物:経済的に無価値なため採掘の対象とならない鉱物)
本記事では、プロジェクトで得られた結果の一部を紹介するとともに、測定した鉱物試料から確認されたラマン散乱強度を図表にまとめています。

図1:黄銅鉱は、経済的価値を持つ鉱物の一つです。
鉱業におけるTime-gated Raman分光法の利点
ラマン分光法は、XRD(X線回折法)と同様に、鉱物組成の同定や定量に利用できる鉱物学的情報を提供します。
推定では、産業上重要な鉱物のうち、従来型ラマン分光法で正確に測定できるものは約20%にすぎません。
残りの約80%では、蛍光やフォトルミネッセンスが測定の妨害要因となります。
これらの妨害信号は、微弱なラマン信号に重なり、鉱業プロセスのモニタリングにラマン分光法を利用するうえで障害となってきました。
Timegated® Raman技術は、この問題を解決します。実際に、本プロジェクトで実施したTimegated® Raman測定では、フォトルミネッセンスによる妨害は問題となりませんでした。
Time-gated Ramanは、試料前処理を必要とせず、リアルタイムのオンライン測定を可能にします。
一方、XRDやMLA(Mineral Liberation Analysis:鉱物単体分離解析)などの現在の代表的な分析技術では、試料前処理が常に必要となるため、連続測定への適用が比較的困難です。
さらにXRDには、リチウムのような軽元素や非晶質構造の分析が難しいという課題もあります。
従来型ラマン分光法と比較した場合の3つ目の利点は、Time-gated Ramanが周囲光のある環境でも安定した測定を可能にすることです。
また、熱放射も測定を妨害しないため、高温プロセスも測定できます。
周囲光の効果的な除去および高温測定については、上記のリンクをクリックしてご覧下さい。
本プロジェクトの測定は周囲光のある環境で実施されました。
このような条件で従来型ラマン分光法を使用する場合、測定ははるかに難しくなります。ただし、Time-gated Raman測定においても、レーザーに対する眼の安全対策や保護メガネの着用は必要です。
| 比較項目 | 従来型ラマン分光法 | Time-gated Raman分光法 | XRD・MLA |
|---|---|---|---|
| 得られる主な情報 | 分子・結晶構造に由来するラマンスペクトル | 蛍光を時間的に分離したラマンスペクトル | 結晶相、鉱物組成、元素組成など |
| 蛍光・フォトルミネッセンス | ラマン信号を覆い、測定を妨げることがある | 時間分解により影響を大幅に低減 | 原理的にラマン蛍光の影響を受けない |
| 試料前処理 | 比較的少ない | 原則として不要 | 一般に粉砕、研磨、成形などが必要 |
| リアルタイム測定 | 蛍光の少ない試料では可能 | 蛍光性試料を含むオンライン測定に適する | 連続・オンライン測定への適用には制約がある |
| 周囲光の影響 | 遮光が必要になる場合が多い | 時間ゲートにより周囲光の影響を抑制 | 測定原理や装置構成による |
| 高温試料・熱放射 | 熱放射が測定を妨げることがある | 熱放射の影響を抑え、高温プロセスへの適用が可能 | 専用設備や測定構成が必要 |
| 非晶質材料 | 測定可能だが、蛍光が障害になる場合がある | 蛍光性を持つ非晶質材料にも適用可能 | XRDでは結晶相と比べて解析が難しい |
| 軽元素・リチウム関連 | 化学結合や化合物の構造として評価 | 化学結合や化合物の構造として評価 | XRDでは元素そのものの直接評価が難しい場合がある |
| レーザー安全対策 | 必要 | 必要 | レーザー安全対策は通常不要 |
ラマン測定方法の概要
鉱物試料は、532 nmのパルスレーザーを搭載したTimegate Instruments社のPicoRaman分光器を使用して測定しました(図2)。
各試料について連続10回の測定を行い、合計370回の測定結果を取得しました。
1回の測定では、5,880,000回のレーザーパルスを記録しました。すべての測定において、同じ分光器と同一の測定条件を使用しました。
得られた測定結果を解析し、その後の計算および可視化に使用しました。

図2:ラマンプローブを使用した岩石試料の分析。
産業上重要な鉱物の検出限界の推定
本プロジェクトでは、経済的に重要な主要産業鉱物の多くを含む試料群を収集し、測定しました(図3)。
SNR(信号対雑音比)の違いは、鉱物ごとの検出限界の違いを示しています。
図の左上には、特に高い信号対雑音比を示した鉱物が配置されています。
大きな経済的価値を持つ鉱物のうち、特に有望な結果が得られたものには、次の鉱物が含まれていました。
- アパタイト(燐灰石)
- スポジュメン(リシア輝石)
- 鉄鉱物(ヘマタイト/赤鉄鉱)
- 黄銅鉱
- グラファイト(石墨)
脈石鉱物を識別し、定量することも重要です。次の脈石鉱物からは、強度の高いラマン信号が得られました。
- タルク(滑石)
- 石英
- 方解石
- ドロマイト
- 石膏
- 長石
- 蛍石
- ガーネット(ざくろ石)
- 緑泥石
試料における検出限界について、さらに詳しい情報を希望される場合は、お問い合わせください。

図3:最大の信号対雑音比に基づいて配列した鉱物スペクトル。最大信号値は20を上限としており、青線で示されています。
赤線は信号対雑音比3を示し、信頼できる検出の限界とみなすことができます。
高温プロセスおよび鉱山工程への応用
Timegateでは、高温焼成プロセスにおいて、スポジュメンがα相からβ相へ転移する際の転換率を監視・制御した事例資料を提供しています。
また、廃石や脈石を有価鉱物から分離し、プロセス中に生じる可能性のある鉱物学的変化を検出するため、モニタリングサービスと組み合わせた新しいセンシングハードウェアを開発しました。
Timegateのソリューションを鉱山向けサービスのエコシステムやERP(統合基幹業務システム)と連携することにより、鉱山内のマテリアルフローから得られるリアルタイム情報の処理と社内共有を支援できます。
これにより、選鉱プロセスを最適化し、生産量の向上に貢献します。Timegateでは、Time-gated Raman分光法を利用したオンラインプロセスモニタリングの事例をまとめたパンフレットも提供しています。
本記事は、Timegate Instruments社の原文記事を日本語に翻訳・編集し補足説明を加えたものです。
原文:Screening Industrially Important Minerals with Time-gated Raman Spectroscopy
試料の種類や測定条件についての事前相談も可能です。Timegateラマンの資料・製品情報は、こちらからどうぞ。
