Time-gated Ramanによる藻類培養モニタリング

フォトバイオリアクター培養液から、培養状態の違いを捉える

ROBA(Robust Algae Systems)プロジェクトとは

ROBAは、微細藻類をCO₂固定および持続可能な原料として活用することを目的に、フォトバイオリアクターの設計、培養モニタリング、藻類バイオマスの用途評価までを検討した共同研究プロジェクトです。プロジェクトでは、大きく次のテーマが検討されました。

・フォトバイオリアクター設計
・藻類培養モニタリング
・藻類バイオマスの用途評価
・プロジェクト管理・連携・成果発信

このうちTimegate社は、藻類培養モニタリングのワークパッケージにおいて、Time-gatedラマン分光器による培養液スペクトルの取得と培養状態の判別に取り組みました。

培養液をそのまま測定し、状態変化を捉える

藻類培養では、培養状態の監視やコンタミネーションの早期検出をオンライン化することが重要な課題となります。

ROBAプロジェクトでは、微細藻類培養をモデルとして、従来ラマンで問題となる蛍光バックグラウンドの影響を抑えながら、培養状態の違いをラマンスペクトルとして捉えることが検討されました。

測定にはPicoRamanと浸漬プローブを使用し、細胞や培地を含む液体培養サンプルを測定対象としました。

Time-gated Ramanでは、蛍光の影響を時間領域で抑制することで、培養液からラマン由来のスペクトル情報を取得できます。

従来ラマンでは捉えにくいスペクトル変化を検出

培地・細胞・代謝物などが混在する実際の培養液では、単純な精製試料とは異なり、蛍光や複数成分の重なりが測定を難しくします。Time-gated Ramanは、このような蛍光性の強い培養液からラマン情報を取得する手段として、プロセスモニタリングへの応用が期待できます。

スペクトルと多変量解析から培養状態を判別

ROBAプロジェクトでは、スペクトルを取得するだけでなく、多変量解析を組み合わせた培養状態の判別も検討されました。通常のChlorella培養液とコンタミネーションを含む培養液から、合計46スペクトルを取得しました。

このデータを、

  • モデル構築に使用する学習用データ
  • モデル構築には使用しない独立テストデータ

に分け、PLS-DAによる分類モデルを構築しました。その結果、純粋培養とコンタミネーションを含む培養をスペクトル情報から判別できることが示されました。さらに、モデル構築に使用していない独立テストデータに対して、AUC 0.90を示しました。これは、Time-gated Ramanで取得したスペクトルと多変量解析を組み合わせることで、未知の培養サンプルについても培養状態を判別できる可能性を示す結果です。

「測る」から「培養状態を判断する」へ

バイオプロセスにおけるラマン分光法の価値は、単にスペクトルを取得することだけではありません。培養中のスペクトル変化を継続的に取得し、そこから培養状態、濃度変化、異常兆候などを捉えることができれば、プロセスを理解し、次の操作を判断するための情報として利用できます。

ROBAプロジェクトで得られた結果は、Time-gated Ramanが、

というプロセスモニタリングへ展開できる可能性を示しています。特に、蛍光の強い培養液では、従来ラマンでは取得が難しかった情報をTime-gated Ramanによって利用できる可能性があります。

藻類培養から、より幅広いバイオプロセスへ

今回の研究対象は微細藻類ですが、

  • 培地
  • 細胞
  • 代謝物
  • 目的生産物

などが混在し、培養の進行とともに組成が変化するという点は、さまざまなバイオプロセスに共通しています。そのため、ROBAプロジェクトで示されたアプローチは、藻類培養だけでなく、発酵や細胞培養を含むバイオプロセスモニタリングへの展開も考えられます。
Photontraceでは、Time-gated Ramanを用いた測定可否確認から、測定条件の検討、スペクトル解析、プロセスモニタリングへの展開までご相談いただけます。蛍光の強い培養液や、従来ラマンでは測定が難しかったバイオサンプルについても、お気軽にご相談ください。

Reference

Final report for Business Finland Co-Research project:
ROBA – Robust Algae Systems
VTT Research Report VTT-R-00482-24, 2024

Photontraceのバイオプロセス分析

Photontraceでは、Time-gatedラマン分光を用いた培養液、発酵液、バイオ変換反応などの測定可能性を評価しています。対象成分、培地組成、濃度範囲、蛍光強度、参照分析方法、プローブの設置条件などを確認し、リアルタイムモニタリングへの適用可能性を検討します。
Time-gatedラマン分光と、卓上NMR、クロマトグラフィー、バイオアナライザーなどの分析技術を参照情報として組み合わせることが重要です。
各分析法の特徴を生かしながら、バイオプロセス中の変化を継続的に捉える測定方法をご提案します。

本ページは、上記論文を基にPhotontraceが日本語で内容を要約し、バイオプロセス分析の観点から独自に解説したものです。弊社は、本研究の著者または実施機関とは関係ありません。

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