上海大学における高温ラマン測定

従来型ラマン分光法では、背景光による干渉が問題となることが多く、通常、測定系は微弱な環境光さえ入り込まないように遮光されています。

時間分解ラマン分光法は、その測定原理上、環境光や熱放射の影響を大幅に受けにくいため、高温試料や、試料の多形転移および相転移を研究するうえで、より適した分析手法です。

上海大学の先進特殊鋼国家重点実験室(SKLASS)で行われたTimegate Instrumentsのデモンストレーションでは、CaSiO₃ガラスを最高1,600℃まで段階的に加熱し、異なる温度で測定しました。得られたスペクトルからは、温度に伴う試料物質の変化を明瞭に確認できます(下図参照)。

図1. Time-gated測定原理を用いて、異なる温度で測定したCaSiO₃ガラスのスペクトル。

図2. Time-gatingにより、熱放射および環境光による干渉を最小限に抑えます。
透明窓を通して加熱セル内の試料を連続的に測定しながら、温度を所定の値に調整しました。

熱放射による背景光と環境光を抑制する原理

時間分解測定では、検出器は極めて短い時間だけ、繰り返し作動します。

時間分解ラマン分光法で使用されるパルスレーザーは、瞬間的に非常に高いパルスエネルギーを持っています。そのため、従来の連続波レーザーによるラマン散乱と比較して、瞬間的に発生するラマン散乱の「バースト」は高い強度を示します。

この特性により、極めて短い時間を繰り返し設定し、その時間内に高強度のラマン散乱を取得できます。つまり、取得されるラマン散乱信号と背景放射との比率を高くすることができます。

このため、時間分解ラマン分光法は、環境光や熱放射のような連続的な背景干渉の影響を大幅に受けにくくなります。この原理を下図に示します。

図3. 時間分解測定における背景干渉の抑制は、非常に短い時間内に発生する高強度のラマン散乱バースト、すなわちパルスだけを取得することに基づいています。高強度のラマンパルスと次のパルスとの間では、スペクトル情報を取得しません。

上海大学とBeijing Full-Band Science & Technology

中国におけるTimegate Instrumentsの販売代理店であるBeijing Full-Band Science & Technology Development Co., Ltd.は、先進特殊鋼国家重点実験室(SKLASS)と共同で、上海大学にTimegate PicoRamanラボを設立しました。

このラボは、中国で初めてPicoRaman分光器を導入した研究施設であり、Timegated® Raman分光法を用いた先駆的な研究を可能にしています。

図4. Beijing Full-BandとSKLASSによるTimegate PicoRamanラボ。

Timegate Instrumentsは、装置の設置のため、今年1月に上海大学およびSKLASSを訪問しました。また、同時に開催された高温測定ワークショップにも参加し、技術デモンストレーションを実施しました。

このワークショップには、北京大学の教職員や学生、提携企業、導入を検討しているお客様など、多くの方々が参加しました。私たちは、Timegate Instrumentsの技術とその応用について講演する機会をいただき、大変光栄に思っています。

今回の訪問を企画し、現地でご対応いただいたBeijing Full-Band Science & Technology Development Co., Ltd.ならびに、ワークショップにご参加いただいた皆様に、心より感謝申し上げます。

本記事は、Timegate Instruments社の原文記事を日本語に翻訳・編集し補足説明を加えたものです。
https://www.timegate.com/resources/blog/high-temperature-measurements-at-shanghai-university

試料の種類や測定条件についての事前相談も可能です。Timegateラマンの資料・製品情報は、こちらからどうぞ。

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